その2「いや、このギター安いっしょ、ぼったくりじゃねえぞ編」
- グッズではなく本気のメッセージだ(=ギターはじめろ)
- マジで本人のギターに近づけようとするカスタム(=こだわってる)
- しかもカスタム分の値上げが少ない(=ぼったくってない)
- 受注品。希少価値がある。数年後でも余裕で売れる(=レアい)
- 初心者向けギターとして”良いもの”である(=実用性がある)
残りの2~5をざっくりと話す。
マジで本人のギターに近づけてる
まずは この黒テレのスペックとFenderの元ネタを見てみよう。
@d_outpanmen そそ!晴一さんのテレキャスターは、通称「黒テレ」だよ! それの晴一プロデュースモデルを販売するんだってさ! ちなみに、注文はファンクラブ会員限定です(・∀・) ↓スペック pic.twitter.com/VgWG29pMON
— みちて (@S6370223) 2016, 1月 26
ファンクラブ限定ページの説明によると、このギターは
Classic 60s Tele US Pickups | Telecaster Electric Guitars | Fender® Guitars
を元に、晴一さんのギターに向けてカスタマイズしたモデルである。
Fender Japanというラインに、本家USAのパーツを載せた、”そこそこ”のモデルだ。
ギターをやってる人なら、スペック表比較して頷くポイントも多いだろう。
でも、購入を迷う人たちからすれば「ステッカー以外は何が違うんじゃ」と思うはずだ。
大きな変更点は4つ
まずボディの材質が変更されている。アルダー→アッシュ。
音的な問題というよりも、材質を本人のものと同じにするためだと思う。
後述の塗装の問題を絡めると、アッシュボディであることが活きてくる。
指板含めて、木材部分はこれで同条件になる。
フレットが違う。ビンテージ→ミディアムジャンボに
ネックに打たれた金属パーツ、フレットが少し大きいものになっている。本人の仕様と一致させてると思われる。
一般にフレットのサイズが大きくなることで、タッチが軽く弾きやすくなる。
好みの問題だけど、個人的には嬉しい変更点。
ブリッジの変更。3連→6連ブリッジ
ギターをやっていない人に説明しにくいカスタムだけど、早い話がチューニングが安定しやすくなる。
ギターのボディの金属部分、弦が張ってある根元のパーツをブリッジという。
通常のテレキャスターは6本の弦を3つの金具(3連)で張っている。
黒テレでは6本の弦を6つの金具(6連)で張っている。
これによって、ギターのピッチ調整がしやすくなる。
当然、弦に直接触れる部分なので、音も少し変わるそうだ。
最大の違い・塗装の仕上げが違う。ポリ→シンラッカー
ここが一番の違いになる。塗装が薄くなっている。
シンラッカー塗装のほうが、塗装で振動が抑えられないためギターがよく鳴るらしい。
が、そんなことどうでもいい。
塗装が薄いということはボディに傷をつけやすいということだ。
これは一見するとデメリットに見える。
しかし、晴一さんの黒テレに施されたレリック(傷加工)を再現するにはこの傷をつけやすいという点が最大のメリットになる。
で、カスタム分高くなったの?
アーティストモデルであることを加味すると、そんなに高くなっていない。
Fenderの元モデルが8万、黒テレが10万。
2万弱の価格差がある。
まず仕様変更でどのくらい高くなるのか。単純比較が難しいため、
30万円レベルの国内工房のオーダーシステムを参考にしよう
まず材質の変更で5000円~10000円程度のアップ、
シンラッカー塗装で15000円~20000円のアップ、
そして、Fenderの6連ブリッジが定価で7500円、
参考サイト:
プロビジョンギター | ギター製作 | ギター修理 | ギターパーツ販売 | ギターパーツ専門WEBショップ
材と塗装でだいたい3万円くらいのアップになる。
もちろんこれは国内トップレベルの工房での3万円アップなので、あくまで参考レベルである。10%くらい高くなりますよーといった感じ。
6連ブリッジもFender純正なので、7500円分そのまま上がるわけじゃない。
よって黒テレの場合、仕様変更による価格アップは1万円くらいだろうか。
そして、これにステッカーが付く。もちろん、スタッフの汗の分が価格に乗る。
晴一さんのネームバリューが乗る。
なのに10万円である。
他社・他バンドのアーティストモデルはネームバリュー分で4~5万くらい高くなることだってある。
妥当どころか、むしろ安い。安すぎる。
多分、このギターを買っても晴一さんにロイヤリティは入らないのではないか。
そのくらい安い。
受注生産だ。レアだ。転売できるぞ
10万円で買って置物になっても、ギターは全然売れる。
定価以上になるかどうか?
それはこのギターのこれからの人気にもよるけど、ちょっと考えにくい。
一般に楽器量販店の中古買取価格はだいたい定価の30%、ヤフオクで売れば50~60%くらい。
品数が少ないレアものになるため、大きく値崩れはしないはずだ。
よって、
「晴一さんのロマンに憧れて買ったものの、3年近く埃を被ってしまった」
そういう場合でも最低5万くらいで売れる。
年間1万3000円くらいで、晴一モデルが部屋にある生活を送ることができる。
ギターとして実用的だ
以上の通り、ギターのスペックを見てきた。
おそらく、音も弾き心地も値段なりに使えるんじゃなかろうか。
Fenderの8万円代の価格帯といえば、入門者から中級者、上級者でもサブギターとして幅広く使えるギターの価格帯になる。
一般的な初心者ギターは2~3万くらいのため、ギターを触ったことが無い人にとってみればハードルが高く感じられるかもしれない。
だけど、この価格帯のギターが一番ストレスが少なく、一番ギターに飽きない。
加工の精度や音への不満、その他トラブルといった煩わしさが少ない。
だから、ギターを弾く楽しさをありのままに教えてくれる。
それがこの価格帯のギターの最大の魅力だ。
もし、もっと良いギターを買っても、傍に置いておけるだろう。
晴一さん本人の"黒テレ"はFender社の職人、ジョンイングリッシュという偉いおじいちゃんが作った高いギターだ。何年か前に亡くなった。
今回のHARUICHI MODELはあくまで量産品ギターを元にした受注品、工場生産のものであり、
弾き心地も音も晴一仕様のものには当然及ばない。
だが、このギターは何度も繰り返すように、「黒テレに憧れる人」のために作られている。ギターを手にするキッカケとして設計されている。
ギター経験者のポルノファンからは、
「10万円のギターなのに、試奏ができない。不安だ」という声もある。
おそらく、この黒テレはそういう心配をする層のために企画されたギターでは無い。
フレット加工精度や、ネックの組み込み。塗装のクオリティを吟味して、ピッキングの反応性やサスティンを念入りに調べ上げる。
そうやって”アタリ”のギターを選ぶ人にとって見れば、HARUICHI MODELはリスキーで割高なモデルに写るだろう。
でも、本家のステッカーがついてくるし、とりあえず買えばいいんじゃないか。
結論:買え
以上。疲れた。
確かにグッズとしては10万円が目を引くかも知れない。
だけど、10万円のギターとして見ても全然高くない。
値段で迷おうが、用途で迷おうが、とりあえず買おう。
黒テレには僕らの憧れが詰まっている。そして憧れを最大限楽しさに変える力が詰まっている。
これからギターを始める人でも、挫折した人でもいい。
この黒テレはきっとギターの楽しさを優しく教えてくれるはずだ。
ちなみに僕は、明日の食事も無いくらい困窮し
love up!もツアーも泣く泣く諦めた身分なので黒テレ買いません。